今日の世界経済は、緩やかな回復基調にあり、先行きについても緩やかな回復が続くことが期待されますが、中国をはじめ、アジア新興国などの経済の先行き、政策に関する不確実性による影響、金融資本市場の変動の影響などについての注視が必要となっています。
こうしたなか、平成30年度の政府予算案は、経済再生と財政健全化を両立する予算と位置づけており、予算のポイントとして、人生100年時代を見据えた人への投資を拡充する「人づくり革命」や持続的な賃金上昇とデフレからの脱却につなげるための「生産性革命」と併せて「財政健全化」が掲げられています。
国の地方財政計画においては、地方が子育て支援や地方創生等の重要課題に取り組みつつ、安定的な財政運営を行うことができるよう、一般財源総額において、前年度を356億円上回る62.1兆円が確保されているところです。
当町の平成30年度予算は、一般会計が、前年度に大型補償が集中した向洋駅周辺土地区画整理事業や保育所施設耐震化、小規模保育所整備助成事業などの投資的事業費の減少などにより、前年度比13億5千4百万円減、率にして7.4%減で、歳入歳出予算総額は168億8千4百万円となりました。また、国民健康保険特別会計が県単位化により前年度比10億7千9百万円減となったこともあり、一般会計と5つの特別会計を含めた全会計予算は、前年度比26億1千3百万円減、率にして8.4%減の総額284億4千6百万円の予算編成といたしました。
一般会計の歳入においては、不透明感を増す国際経済情勢や金融市場の変動など不確定要因もありますが、経済全体は引き続き緩やかな回復基調にあることもあり、町税は、法人町民税の落ち込みがあるものの、個人町民税、固定資産税の増収が見込まれ、前年度比2千5百万円、0.3%増の78億3千5百万円を計上しています。また、前年度の法人町民税の大幅な減少を反映して、地方交付税および臨時財政対策債は、合わせて4億4千7百万円の増加を見込んでいます。一方、前年度予算で計上していた繰越金については、今年度の剰余が見込めないことから計上しておらず、前年度に引き続き財政調整積立基金繰入2億円による財源不足対策を行った予算編成となっています。
平成30年度は、「第4次総合計画」の3年次目、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の4年次目となります。このため、これらに掲げた政策、施策、事業を着実に実施し、加えて、町民の皆さまにお約束した3つの宣言、「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」「志を育む教育のまち」「バランスのとれた行政施策の展開」を実現するため、財政調整積立基金の一部取崩により財源を確保し、中長期的な財政の健全化を担保するなかで、効率的で質の高い行政運営を行うことにより、着実なまちづくりを推進する予算としました。
歳出においては、ハード面では、かねてから三大事業と位置付けていた「向洋駅周辺土地区画整理事業」「公共下水道事業」「学校施設耐震化事業」のうち、「学校施設耐震化事業」は府中中学校の新校舎完成をもって終了し、平成29年度から着手した府中公民館等改築事業は、基本設計を行うとともに実施設計に着手します。都市基盤の整備も着実に実施し、道路新設改良、橋りょう長寿命化を進めるとともに、公共下水道長寿命化事業では、「府中1号幹線改築更新工事」を行います。補助街路整備事業では、みくまり北小学校線の用地取得等を行います。また、南小学校青崎東線は道路改良工事を行い、今年度で事業認可区間の整備を完了します。
3つの宣言に係る施策として主要なものを挙げますと、宣言の一つ目、「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」の実現に向け、新たに「ネウボラセンター事業」を実施します。「ネウボラふちゅう」を開設し、相談支援体制の拡充や産前産後ケア等の事業を行うとともに、これを契機に、母子保健の所管を子育て支援課に移行し、子育てに係る業務の一元化を図り、安心して妊娠・出産・子育てができる切れ目のないサポート体制を強化します。また、病児・病後児保育事業では、新たに送迎サービスを開始し、保育所等利用中に体調不良となった子どもを病児保育室の職員が迎えに行き、病児保育室での一時預かりを行うことにより、育児と就労の両立支援を行います。母子健康診査事業では、新たに新生児の聴覚検査の費用助成を行い、聴覚障害の早期発見・早期療育を図ります。また、不妊治療費助成事業では、新たに特定不妊治療のための男性不妊治療についても助成の対象とします。府中南小学校区放課後児童クラブ(留守家庭児童会)は、既存施設の隣接地(むつみ福祉園跡地)に新たな施設を建築します。子育て世代向けの住宅リフォーム補助制度では、住宅金融支援機構と連携し、より利用しやすい制度とします。
宣言の二つ目、「志を育む教育のまち」では、引き続き学校運営改善推進事業を実施します。学校現場における業務改善を一体的・総合的に推進するとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを引き続き重点的に配置し、充実した相談体制の確立に努めます。また、中学校の英語検定受検経費の助成については、2・3年生に加え1年生まで助成対象を拡充します。地域力を学校教育に生かすコミュニティ・スクールについては、既に導入済みの1校に加え、町内小・中学校7校すべてで導入を目指します。
宣言の三つ目、「バランスのとれた行政施策の展開」では、つばきバスを含む公共交通の利便性の向上を目的として「府中町地域公共交通網形成計画」を策定します。また「第2次府中町健康増進計画・食育推進計画」の中間見直しを行います。国民健康保険特別会計では、県単位化への移行に伴い、国の財源拡充等により、一般会計からの法定外繰入は大幅な減少となります。介護保険特別会計では、平成30年度から始まる「第7期介護保険事業計画」を円滑にスタートさせ、計画期間内の事業を推進します。
安心安全のまちづくりでは、消防ポンプ自動車2台の更新を行い消防体制の強化を図ります。また、救急車3台に病院と画像をやりとりできる画像伝送装置を配備し、救急体制の充実・強化を図ります。災害対策事業として、避難所の機能充実を図るため、マンホールトイレをくすのきプラザ、空城山公園および揚倉山健康運動公園の3ヶ所に設置し、既存の小中学校7校分を含め、町内10ヶ所のマンホールトイレ整備を完了します。また、発災時の迅速な避難を支援するため、避難行動要支援者情報と地図情報を組み合わせた避難行動支援システムを導入するとともに、府中東小学校区の土砂災害ハザードマップを作成します。
環境分野では、2020年(平成32年)開催の都市緑化ひろしまフェアに向け、空城山公園の植栽管理を見直します。
商工振興の新規事業として創業支援事業を開始します。先輩起業者による創業者への個別相談に補助をする府中町メンターズ補助金や広告デザイン作成費の補助、オフィス誘致促進のための助成金の交付などを行います。
笑顔の役場創出として、これまでの接遇研修の効果測定と更なる課題把握のための覆面調査を実施し、調査結果を踏まえた接遇研修を行うほか、役場執務環境の改善を引き続き取り組みます。また、人材育成として、公務に有益な推奨資格取得の支援を継続するとともに、自発的研修の支援を行います。
その他、男女共同参画、人権の推進、健康づくりなど幅広い住民ニーズに対応するバランスの取れた行政施策を展開する予算といたしました。また、こうした取組みや住環境等の魅力を町内外に効果的に情報発信する、魅力発信事業をさらに充実させます。
平成30年度予算は、「第4次総合計画」や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げた政策、施策、事業を着実に実施し、三つの宣言で掲げた取組みを随所に盛り込んだ予算となっております。これらの諸施策でしっかりとした成果をあげ、誰もが「住んでよかった」「これからも住み続けたい」「住んでみたい」、そう実感できる府中町をめざして、精一杯取り組んでまいる所存でございます。町民の皆さま並びに議員各位の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
府中町長 佐藤信治