昨年は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化している中、2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻により国際情勢が大変不安定となりました。世界的に原材料価格が上昇し、一時1ドル150円を超えるなど急激な円安もあり、国内でも物価の上昇が続きました。原油等エネルギー価格は高騰し、光熱水費をはじめ様々な生活必需品の価格が値上がりしました。
そこで当町はコロナ禍における急激な物価高騰に対し、国の臨時交付金等を最大限に活用し、学校給食食材費の高騰分を補助し、各種社会福祉施設等には光熱水費等の価格高騰を踏まえた支援を行い、町民一人ひとりにクーポン券を配布するなど町民生活を支えるため様々な対策に取り組みました。
一方で、新型コロナウイルス感染症についてはオミクロン株など変異株に伴う流行の波が繰り返されましたが、医療機関とも連携し円滑なワクチン接種を推進してきました。今年5月からは国の方針により、感染症としての取扱いが「2類相当」から季節性インフルエンザ同様の「5類」に移行されます。国全体の「ウィズコロナ」として経済社会活動の正常化に向けた動きと言えますが、今後も変異株の状況や感染拡大の動きを注視し、引き続きワクチンの接種体制を確保して町民の健康を守るよう適切に対応していきます。
さて、令和4年12月の閣議において政府は我が国の経済状況について、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続く一方、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など我が国経済を取り巻く環境は厳しさを増しているとしています。
また、令和5年度の経済見通しについては物価高を克服しつつ、計画的で大胆な投資を官民連携で推進し経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せる施策に取り組むとしています。
こうした状況で国は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を策定し「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とし、予算・税制、規制・制度改革などあらゆる政策手段を活用した総合経済対策を速やかに実行し、難局を乗り越え、未来に向けて日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せていき、日本経済を再生するとしています。
また、新型コロナウイルス感染症対策については、ウィズコロナの下、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るとし、次の感染症危機に備え政府の司令塔機能の強化に取り組み、防災・減災、国土強靭化では、これまでの成果や経験をいかし、更なる取組を推進するため次期国土強靭化計画を検討するとしています。
地方財政対策では、社会保障関係費の増加が見込まれる中、地方公共団体が住民ニーズに的確に応えつつ、地域のデジタル化、脱炭素化の推進などの課題に対応し行政サービスを安定的に提供できるよう、必要となる一般財源総額については、交付団体ベースで対前年度を1,500億円上回る62兆1,635億円、うち地方交付税総額については、前年度を3,073億円上回る18兆3,611億円が確保されているところです。
こうした状況を踏まえ、本町の令和5年度予算は、依然として厳しい経済環境の中での編成となりましたが、町の最上位計画である第4次総合計画の後期実施計画に基づき、町を取り巻く様々な社会情勢の変化にも対応した適時適切な事業を実施していきます。
私の目指す「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」、「志を育む教育のまち」、「バランスのとれた行政施策の展開」の着実な実施とともに町民の生命と財産を守る「防災・減災、国土強靭化」を推進し、「新型コロナウイルス感染症対策」では引き続き、迅速で効果的な対策・支援を行うとともに、将来世代も安心して暮らせるための「地域の脱炭素化の推進」に係る施策の展開を開始します。
また、ウィズコロナとして、国のデジタル社会実現に向け「自治体DX」を推進する予算編成としています。
令和5年度予算の総額は、一般会計が192億2千6百万円で、対前年度比13億1千7百万円、率にして7.4%増の予算編成としました。
一般会計以外の特別会計では、国民健康保険特別会計は被保険者数が減少傾向にあり、対前年度比5千5百万円、率にして1.2%減、介護保険特別会計は給付費等の利用実績を踏まえ、対前年度比4千1百万円、率にして1.0%減としました。後期高齢者医療特別会計は後期高齢者人口が増加していることを反映し、対前年度比4千2百万円、率にして5.0%増としました。
一般会計の歳入において、町税は、所得の伸びを前年度実績ベースから前年の給与所得の伸び率等を参考とし、コロナ禍からの回復を見込み、対前年度比1億1千5百万円、率にして1.5%増の75億3千7百万円としました。
地方交付税は対前年度比4億2千万円増の20億9千1百万円、臨時財政対策債は対前年度比3億5千2百万円減の2億9百万円とし、臨時財政対策債を含めた交付税全体では対前年度比6千7百万円の増となっています。
町債は教育施設の改築事業等による増があり、全体で2億5千3百万円の増となりましたが借換債が含まれており、借換債を除いて比較すると1億4千万円の減となっています。
また、国庫支出金は土地区画整理事業等が国の補正予算を活用し前年度前倒ししたこともあり、対前年度比2億1千9百万円減の35億3百万円となりました。
繰入金のうち一般財源の不足を調整する財政調整積立基金からの繰り入れについては、対前年度比1億3千2百万円増の2億9千4百万円としました。
一般会計の歳出においては、まず、「新型コロナウイルス感染症」のワクチン接種については、感染症としての取扱いは5月から「5類」に移行されますが、特例臨時接種を1年間延長し、65歳以上の高齢者及び基礎疾患を有する方等を対象に5月から8月にかけて接種を行い、9月から12月にかけては接種可能な全ての方を対象に接種する方針が示されています。当面は令和4年度繰越予算にて接種体制を継続し、必要に応じて補正予算で予算措置するなどワクチン接種体制の確保を継続し、町民への円滑なワクチン接種を確保します。
第4次総合計画の基本目標1、「みんなで支え合い、未来につなぐまちづくり」では、「地域で共に支え合う福祉の充実」として、令和5年7月から「ふれあい収集事業」を開始します。要介護や障害等のため、ごみステーションに家庭ごみを出すことが困難な世帯に対し、自宅の玄関先でごみの収集を行います。
また、「福祉事務所(生活困窮者自立相談支援)事業」において、自立相談、就労準備及び家計改善の一体的な支援を府中町くらしごと自立応援センターで実施します。
「多世代連携による子育て支援の充実」として、「こども医療費給付事業」を拡充し、令和6年1月から中学生の通院も給付の助成対象に加え、子育て世帯の負担を軽減します。
「子どもの予防的支援構築事業」は、AIを活用した予防的支援として昨年度はデジタル庁の実証事業として採択を受け、国の事業としてシステムの構築を進めました。令和5年度はAI予測に基づいたリスクを抱える子どもたちを多面的・継続的に見守り支援する仕組みを構築するとともに、引き続き県のモデル事業として県内モデル4市町のデータを活用した統合AIモデルの構築を進めます。
「保育所等創設助成事業」は、令和6年4月開所の保育園の施設整備に対する補助金を交付します。また同時に、町内の保育園等に就労する保育士への「新卒保育士等就職支援貸付金」を令和6年度から開始できるよう準備を進め、地域の保育士不足解消を図ります。
「高齢者が生きがいを持って暮らせるまちづくり」として、「介護施設整備助成事業」においては、第8期介護保険事業計画に基づき、町内へ「看護小規模多機能型居宅介護事業所」の開設を目指し事業者の募集を行い、選定事業者へ補助金を交付します。
「高齢者いきいき活動ポイント事業」においては、近隣市町とも広域都市圏の枠組みで連携しており、高齢者の社会参加を促し地域のボランティア活動や介護予防等の活動にモチベーションをもって参加していただき、それが高齢者自身の介護予防等に資することを期待し引き続き実施します。
基本目標2、「学び合い、志を育むまちづくり」では、「志の教育 信頼される学校教育の確立」として、「学校運営改善推進事業」においては、スクールカウンセラーの配置を継続し、学校生活に不安を抱いている児童生徒へ早期対応や適切な指導を実施します。
「グローバル教育事業」においては、引き続き外国語指導助手を派遣し、外国語によるコミュニケーション能力の向上を図り、中学校全学年の英語検定費用を助成します。
また、小学校及び中学校の「給食食材調達事業」は、令和5年度から学校給食費を公会計化し、保護者等からの給食費をもとに給食用食材の調達を行います。
「学び合い生きがいを育む社会教育の充実」では、「下岡田官衙遺跡保存・整備事業」においては、国史跡指定までの経緯や歴史的な意義について講演会を実施します。また、小中学生を対象とした講座やふるさと再発見講座として活用し史跡の普及啓発を図ります。
「安心・安全で質の高い教育環境の整備」では、「学校施設整備事業(小学校整備)」において、府中中央小学校の児童数増加による教室数の不足が見込まれることから教室増築工事を実施します。併せて、「学校施設整備事業(放課後児童クラブ整備)」において中央小学校区放課後児童クラブの増築工事も実施します。
「府中公民館等改築事業(歴史民俗資料館解体)」においては、旧歴史民俗資料館の解体工事を行います。
基本目標3、「誰もが安心・安全、快適に暮らせるまちづくり」では、「災害に強いまちづくり」として、「防災体制強化事業」において、避難所の防災備蓄倉庫を4か所整備し、災害に備え、毛布、飲料水、食糧等の計画的な備蓄を行うとともに、避難の長期化を想定した避難所マニュアルの作成に取り組みます。
「農業用水路等改良事業」においては、農業用利用もなく災害時に人的被害の恐れのある防災重点農業用ため池の廃止工事を行います。
また近年、地球温暖化が原因とみられる気候変動により猛暑や大雨、干ばつ等の異常気象が世界各地で多発しており、2015年に国連気候変動枠組条約締結国会議(通称COP)により合意されたパリ協定では、世界の平均気温の上昇を抑える努力をすることが世界共通の長期目標として掲げられました。
我が国においては、令和3年10月閣議決定された地球温暖化対策計画において、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2025年度までを集中期間としてあらゆる関係省庁が連携し、脱炭素を前提とした施策を総動員するとされ、地方公共団体が地域脱炭素の基盤となる重点対策を率先して実施することが求められるなど地方公共団体の役割が拡大しています。
そこで、本町としても美しく恵み豊かな地球環境を次世代に継承するため、2050年までに温室効果ガス排出量を「実質0(ゼロ)」にする「ゼロカーボンシティ」の実現を目指すことを宣言いたします。
その実現に向けて令和5年度施策として、「総合的な環境対策の推進」では、「低炭素型社会づくり推進事業」において、家庭用発電システムや家庭用蓄電池等に対する購入補助を行います。
また、「府中の森づくり事業」においては、森林の再生を図るため間伐等の整備を行います。
「ゼロカーボンシティ」の実現には町民・事業者・行政の共通理念のもと、一体となって地球温暖化対策に取り組むことが大事です。今後も一人ひとりの意識改革に繋げられるような環境保全に関する施策について展開していきます。
「地域協働・産業活性化・安心安全のまちづくり」では、「事業者支援事業」において、町内へサテライトオフィスを誘致するための助成を行うとともに、町内事業者の広報費や商品開発費等の販路開拓のための支援を引き続き行います。
基本目標4、「便利で活力と賑わいにあふれるまちづくり」では、「計画的な都市整備の推進」として、「向洋駅周辺土地区画整理事業」においては、向洋駅周辺の整備に向け物件移転補償及び画地整備を進め、「広島市東部地区連続立体交差事業」の推進に合わせ、地区の整備を進めます。
また、「急傾斜地崩壊対策事業」では、鹿籠二丁目地区の法面崩壊対策工事を行い、災害時の急傾斜地崩壊を未然に防ぎます。
基本目標5、「持続可能なまちづくり」では、「新たな働き方の推進」として、「新たな働き方推進事業(業務のデジタル化)」において、手書き帳票をデータ化する「AI-OCR」やパソコン等で行う作業を自動化する「RPA」などのDXツールを引き続き使用するとともに電子決裁システムを導入します。
下水道事業は、前年度の国の補正予算により採択された茂陰1号幹線改築更新工事を開始するとともに公共下水道築造工事等を実施し、面的整備を進めます。
その他男女共同参画、人権施策、平和行政等の推進、健康づくりなど幅広い住民ニーズに対応していきます。
最後に、役場は町民のためにあることを念頭に、「笑顔の役場」を創出するため、全職員が挨拶を励行し、町民に寄り添ったサービスを実現するよう努めます。
以上、申し述べました事業を着実に実施し、成果をあげることで、誰もが「住んでよかった」「住んでみたい」「これからも住み続けたい」と実感のできる府中町を目指して、精一杯取り組んでまいります。
町民の皆様並びに議員各位の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
府中町長 佐藤信治